by Junji Okamoto

「首都大学東京 利益17億」の裏 [2006/07/30]

  1. イントロダクション
  2. 東大の黒字との比較
  3. 首大で起きていること
  4. コンビニ化大学東京
  5. 結論

1. イントロダクション

2006年7月1日(土)の読売新聞(東京地方版)に「首都大学東京 利益17億円」, 「法人化後初の決算」,「研究拠点整備に活用へ」という見出しの3段抜きの記事がおどった. その記事の内容は,前日にプレス発表され, その後 首都大学東京 のサイトに 平成17事業年度決算の概要(PDF) 平成17年度決算の概要と「大学改革を加速する新たな取組」(PDF) 大学改革を加速する新たな取組(概要版)(PDF) 大学改革を加速する新たな取組(PDF) に掲載されたものとほとんど変わらなかった.読売新聞の記事は, 簡単な大学側からの説明らしき言葉で締めくくられている.

...同大では「利益が出ても,都立のころは余ったお金として使いにくかったが, 法人化によって大学の裁量で使いやすくなった」としている。

ほとんど法人側の発表通りのことを,そのまま大きな記事として扱うことに, 疑問を感じざるを得ない.法人といっても,本来, ただ利益のみを追求する会社ではなく,教育という「公益」を支える法人なはずである. その意味で,法人の「金銭面」だけでなく,教育・研究の実態を少しでも明らかにする報道姿勢があってもよかったのではないか.

ちなみに,都立大・短大組合 のサイトに7月10日付の 「手から手へ」(2414号) が掲載されたが,「大学改革を加速する新たな取組」 という勇ましいタイトルとはかなり違った大学の実情が見えてくる.

法人化して一年経った大学の実情はどうなのか, マスコミは知らんぷりをきめこんでいるとしか思えない. 知事の「ひと声」と鳴り物入りで登場した首大のコンセプト「大都市における人間社会の理想像の追求」 はどこへ行ったのか? だれも定義できなかった「都市教養」を初め, 単位互換制度と比べてどこが利点なのかちっともわからなかった「単位バンク」制度, <そんなものまで単位にしてよいのか>という大きな疑問を投げかけた 「ボランティア参加を単位バンクの単位と認定する」という摩訶不思議な制度, 教育責任の放棄でしかない「英語教育外注」など, いずれも,都の発表の時には,大きな記事になっていたはずだが, その後,現場で始まっているはずのこれらの行方をまったく報道しないのは, どうしたわけだろう?

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「新大学のブランドの大暴落の現状とその原因」を再検討 [2005/12/28] [2005/12/31]修正

  1. イントロダクション
  2. 教員数の推移
  3. 大学運営の基本方針
  4. 研究環境と教育環境
  5. 「首都大学東京」における教員の待遇
  6. 結論

1. イントロダクション

2005年が終わろうとしている. 100件以上の抗議声明 や都立大教員や学生・院生の懸命な反対運動にもかかわらず, 前年度におりた設置審の認可に基づき, 4月から首都大学東京が公立大学法人首都大学東京の元に開学してしまった. 学則や, 定款に関しても, 法人の中期計画・中期目標 に対しても,学内からは多くの修正意見が出されたが, その返事はほとんど「のれんに腕押し」の状態で,ほとんど無視されたといってよい (参照: 学則に関する返事, 定款に対しての意見(FAQ W-13)法人の中期計画に対する修正案とその返事中期目標に対する修正案とその返事 ).その結果,予想通りの混乱が2005年4月から始まったのだ. その多くは,「国立大・国 際水準以下の新大学ーーエスカレートした大学管理強化」(2004/8/9) や, 設置認可がおりた後の総長声明(2004/7/4) に指摘されている危惧が現実となったものである.

2005年12月22日, 都立大・短大組合「大学に新しい風を」編集委員会は, 『大学に新しい風を』 第8号(PDF) (2005年12月16日)を公開した.

首大フラッシュで, 私は「2005年12月15日 新大学を憂える教員有志による『新大学のブランドの大暴落の 現状とその原因は何か?--大学の再建策はどうあるべきか--』は『首大』の現状 を理解する上で必読の力作」と12月23日に速報した.

実際に,首都大学東京の現状を分析し,外部へ伝えるという視点から見ると, これまで都立大・短大組合が発表する資料(「手から手へ」)しかない状態が続 いており,横浜市立大学のように,学内の情報を積極的に公開し,問題点を指摘 するようなサイトはない.その理由は,(1)「内部情報を公開してはならない」 とする法人の定款の縛りがあるからだろう.また,(2) 非就任者が,積極的に情報公開すれば,少数派である非就任者は,当然,なんら かの報復をされる危険性がある.(3) 就任者が積極的に情報公開すれば, それは,首都大学東京に所属する者の自己否定となってしまう.

「新大学を憂える教員有志」の文書は,(3)の立場から書かれたものだが, 匿名にすることで,自己否定的になることをたくみに避けながら, 包括的に現状分析を行なったものである.その意味では,力作だが たまらん に引用された一非就任者の意見にあるように,

ここに挙げられている諸々の問題点は、 すでにあの8月1日以降、常に論じられ批判され予見されてきたものだという事実、 そのうえ、そうであるにもかかわらず、この「教員有志」のなかのおそらく少なから ぬ人たちが新大学開学準備に協力し、さらにはその協力態勢を率先して推進してきた指導者で あったという事実が不問にされている...

という側面が(2005/12/31)意見もある.このような(2005/12/31) 「ここに挙げられている諸々の問題点は、 すでにあの8月1日以降、常に論じられ批判され予見されてきたものだ」という観点から, 「新大学のブランドの大暴落の現状とその原因は何か?――大学の再建策はどうあるべきか――」 (以下,『ブランド大暴落文書』と略)をいくつかの点に絞って再検討してみたい ([2005/12/31] A氏からのコメント に答えるを参照).

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封印された書:第7回自己点検・評価報告書 [2005/11/30]

  1. イントロダクション
  2. 巻頭言 — 評価を大学の充実に活かすべし —
  3. 「第7回自己点検・評価報告書」はなぜ封印されたか?
  4. 結論

1. イントロダクション

1991年,「大学の自己点検・評価」は,学内外に報告することが義務づけられた. これは同年に「大学設置基準」が大幅に緩和されたことと深くかかわっている. 大学の設置基準緩和により,大学側に大幅な自由が認められたのと同時に, 大学側には自己点検・評価が求められ,それに基づく教育・研究環境の改善へ向 けた自主的努力が責務となった. 1947年に設立された大学基準協会 は,そのような流れにのり,「大学の自己点検・評価」を前提とした大学の評価 機関としての役割を演ずるようになった ( 大学評価概要参照,2005/12/1/リンク修正).2005年4月1日現在で大学基準協会に 正会員として登録している大学数は,合計322校 (国立 41,公立 28,私立 253,株式会社立 0), 賛助会員として登録している大学数は,合計274校 (国立 45,公立 30,私立 199,株式会社立 0)に及ぶ.

2004年4月1日には, 大学の第三者評価が法的に義務づけられるに至った.具体的に言えば, 大学は,7年以内に一度(専門職大学院は5年以内に一度), 文部科学大臣の認証を受けた「認証評価機関」により評価を受けねばならない.

しかし,大学評価に関しては,その評価の担当者,およびその評価基準が厳しく 問われなければならないこと,一元的な基準で大学評価を行なってはならないこ とが認識されており,その意味で,本来の大学評価のあり方を研究する必要性が叫ばれている. 「大学の第三者評価」が法的に義務ずけられるほんの少し前(2004年3月28日)に, 大学評価学会が設立されているが, まさに,そのような視点に立った大学評価研究がスタートしたと言える.

さらに,日本私立大学協会は,私学高等教育研究所を設立して, かねてから新たな第三者評価機関を検討していたが, 2005年7月12日には,ついに 財団法人 日本高等教育評価機構としてスタートした.

しかし,ここに「自己点検・評価」の結果を公表していない大学がある. それは,東京都立大学である. 東京都立大学の第7回自己点検・評価報告書(『東京都立大学2004 〜教育研究の 成果と到達点〜』)は,実は, 2005年3月25日には発行され,学内外へ配布される予定だった. しかし,どこかで誰かが何の理由からかわからないが,配布を差し止めている. こんなことがあってよいのだろうか?

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事務職員の声をきけ:四輪車の欠かせない一輪 [2005/10/17],[2005/10/18]

  1. イントロダクション
  2. アンケートの概略:派遣職員の場合
  3. アンケートの概略:固有職員の場合
  4. 改善運動は進むか?

  都立大・短大組合は、 「手から手へ」(2367号)で、 「都派遣職員・固有職員アンケート結果」を公開した。

  10月13日現在、73名の都派遣職員・ 固有職員に対してのアンケート結果だが、 これを読むと今さらながら大学における事務職員の重要さを考えざるをえない。 折しも8・1事件 以降の都立大・首大の様子を一人の事務職員の目で見たらどう映ったかが、 事務屋のひとり言 のサイトで公開されている。一人の事務職員から見える大学像というのは、 必ずしも正確な実像ではないという声があるが、 それを言えば、一人の大学教員の目で見た大学像も、 一人の助手から見た大学像も、一人の大学生の目で見た大学像も、 まったく同じ理由から正確な像ではないので、基本的にその信頼性に大差はない。

  大学という組織は、学生、教員、助手、事務職員の四輪があって初めて前へ進むことのできる四輪車なのだが、 それにまたがって運転しようとする学長や理事長が、 4つの車輪の存在を忘れて、ただ思ったところへ行こうとしても、 うまく運転できるものではない。四輪車の特性を忘れて、 レールの上を走ろうとしたり、はしごを登ろうとしてもそれは無理なのだ。

  4つの車輪の中で、おそらく一番目立たない存在が事務職員である。 しかし、実は、事務職員の役割は、極めて大きい。 教員との接点、学生との接点を持ちながら、 効率よく仕事を進めていかねば大学は動かないし、両者の接点を良好な状態に保つことは、 かなりの努力を要する。
  今回は、都立大・短大組合によって発表された「都派遣職員・固有職員アンケート結果」を読み、 その回答の傾向を分析した。

2. アンケートの概略:派遣職員の場合

アンケートの回答者は、合計73名で、その内訳は、派遣職員が45名、 固有職員が28名である。

派遣職員の回答は、
(1) 18年度以降も大学で働くことを希望する--- 8名
(2) 18年度以降も大学で働くことを希望しない --- 23名
(3) わからない --- 13名
(4) 未回答 --- 1名

「18年度以降も大学で働くことを希望する」という(問いかけを促す)言明に対して、 肯定的に答えたのが8名、否定的に答えたのが23名ということであり、 未回答も「わからない」に含めて全体を考えると、 未回答は態度を決定できていない人たちであり、合計14名となる。
それぞれの割合は、8/45(17.8%)、23/45(51.1%), 14/45(31.1%) となり、以下のようなグラフになる。

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最後の総長による総括:その摩訶不思議な結論を解く ;[2005/09/29]

  • 1 イントロダクション
  • 2 総長の総括
  • 2.1 単位バンク制
  • 2.2 都市文明講座
  • 2.3 教員身分問題:任期制・年俸制
  • 2.4 法人と大学の主要ポスト
  • 2.5 大学の枠組み:教育と研究の組織構成
  • 3 総長総括のまとめ

1. イントロダクション 東京都立大学の最後の総長(以下、単に「総長」と呼ぶ),茂木 俊彦氏の 都立大学に何が起きたのか--総長の2年間--- が9月6日に岩波ブックレットNo.660 として発売された。 このブックレットには、確かに総長として、 激動の2年間を過ごした茂木氏の苦渋の経験が語られているが、 あまりにも多くのことが起こりすぎた2年間であり、 ブックレットには収まりきれていない。読者の一人、そして、 元都立大教員の一人として、このタイトルを見て期待したのは、 これまでに公になってこなかった種々の決断の真相と、 総長の本音がどこまで語られているのか、という一点だった。 残念ながら、この期待は裏切られた。このブックレットに載った内容は、 一部の例外を除き、ほとんどが既知の事柄であり、目新しい情報は無いと言ってよい。

一部の例外の中に分類されるのは、今回取り挙げる総長自身の総括である。 しかし、この総括はどこか変である。1つ1つのテーマに判断を下し、 最後に総括をまとめる段階で、なぜか結論がひっくり返るように見える。 そのあたりの事情と、その背後にある摩訶不思議な思考過程を考察した。

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「都市における人間社会の理想像の追及」を追及する:[2005/09/20]

  1. イントロダクション
  2. 総長の口から語られた「追及」
  3. 教職員組合の反応
  4. 時間的順序関係
  5. フィクション:<管理本部長の日々>

1. イントロダクション
2003年10月9日、科学技術大学、保健科学大学、短期大学の3学長連名による 「新大学開学準備に向けて積極的な取り組みを行う旨の意見表明」が、 東京都大学管理本部によって公表された(以下、「3学長連名声明」と略)。 その概要は、新聞各社にも伝えられ、同日の[20時50分]には、 朝日新聞速報が「新大学構想、今度は都が『逆襲』 賛成学長の声明を発表」と いうタイトルでインターネット上に配信している。 このニュースは、10月10日の朝日新聞東京版第3社会面に「都立大の抗議に都が『逆襲』: 新大学構想の賛同者発表」という見出しで掲載された。

東京都立の4大学を廃止して新大学を設置する計画をめぐり、 都大学管理本部は9日、「賛同して積極的に取り組む」とする都立短大、 科学技術大、保健科学大の3大学学長の共同声明を発表した。 新大学をめぐっては、都立大の茂木俊彦総長が 「トップダウンの強行は極めて遺憾」という抗議声明を7日に出したばかり。 都の発表はこの意趣返しともいえ、対立は深まっている。
  都は先月下旬、新大学計画の基本的承認と協議への参加を求める「同意書」 を4大学の教員に配布。3大学の教員は全員提出したが、 最大規模の都立大からは9日現在で1枚も提出されていないという。
[2003-10-09-20:50]

10月10日、読売新聞、産経新聞にも3大学学長声明に関する記事が載り、 東京都のサイトには、 「都立三大学学長が新大学設立に向けての意見表明を行いました」 という見出しとともに、 新大学開学準備に向けて積極的な取り組みを行う旨の意見表明が、 報道資料として発表された。 これは、明らかに10月7日の 都立大学総長声明を意識した対抗策であった。

2. 総長の口から語られた「追及」
2005年9月6日、東京都立大学の最後の総長だった茂木 俊彦氏*1による 岩波ブックレット、 都立大学に何が起きたのか--総長の2年間--- が発売された。その21ページには、 この3学長連名声明のあたりの事情が次のように説明されている。

総長声明からあまり日を置かず、他の大学・短大の学長三名の連名で、 都知事に対する忠誠を誓う以外にほとんど意味のないと思える声明がつくられた。 これは、失態をいくらかでも覆い隠そうとする大学管理本部の"自作自演" であったにちがいない。確証があるわけではないが、 この声明文は管理本部が作文したものだとしか考えられない (些細なことではあるが、管理本部のある人物は、 ふつうは「追求」とするところをいつも「追及」と書く。 この声明にもそれが見られた)。そのうえこの声明は、 管理本部が都庁につめている記者たちに直接プレスするかたちで公表された。 せめて形式だけでもととのえて、三学長がそろって記者会見でもするのが筋だろうと考えたのは私だけだろうか。
茂木 俊彦著 (2005) 『都立大学に何が起きたのか--総長の2年間---』岩波ブックレット660. P.21

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フランス語賠償訴訟:石原知事の反論にならない「反論」:[2005/07/18,7/19,8/13]

  1. はじめに
  2. マスコミ各社の報道
  3. 言葉と数
  4. 知事の結論:ややこしい数字の読み方が、国際語の地位を失わせる?
  5. 数字と言語は違う
  6. そして本当に言いたかったこと:「自分でひたすら覚えた間違った数字」

1. はじめに

首大サポートクラブ(The Tokyo U-club,2004年10月19日)での石原東京都知事によるフランス語に対する暴言に対して、 「石原都知事のフランス語発言に抗議する会」は7月13日(水)に東京地裁に提訴した。 これに対して、石原東京都知事は、7月15日(金)の定例記者会見で、「反論」 を繰り広げたという記事がマスコミ各社から発信された。

2. マスコミ各社の報道

ここでは、マスコミ各社の報道を Web 上の記事からの部分引用という 形で、知事発言に絞って、まず紹介する。

朝日新聞

http://www.asahi.com/national/update/0715/TKY200507150434.html
タイトル:フランス語賠償訴訟、石原都知事が反論

…同知事は15日の記者会見で 「言語が、不便だからという理由で忘れられていくというのは非常 に残念な気がする。そういうことで申し上げた」と反論した。
  石原知事は仏語や仏文化に愛着があるとしながら、「91」を「四つの20と 11」とするなど仏語独特の数え方を挙げて「かつて外交官の公用語として幅を きかせたが、科学技術の討論をしたりするときに非常にやっかいなんで、だんだ ん外れていった」と指摘。提訴に対しても「批判が当たっているか当たっていな いか真摯(しんし)に考えるべきではないか」と反論した。

読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050715i317.htm
タイトル:仏語問題で訴訟、石原知事は「文句は仏政府へ」

…石原知事は15日、記者会見で 「フランス語の先生たちにはうっぷんがあるかもしれないが、 仏政府に文句を言ったらいい」と述べ、発言を修正する考えがないことを 明らかにした。
  石原知事はフランス語について、「例えば91は『4つの20と11』と数える」 と複雑さを紹介。「かつては外交官の公用語として幅を効かせたが、科学技術の討 論の際には非常にやっかいなため、だんだん使われなくなった」と語った。

毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/tokyo/news/20050716ddlk13040033000c.html
タイトル:石原都知事・仏語批判:「失格発言」提訴に反論 「狭い世界では厄介」

…石原知事は15日の定例会見で「かつて外交官の公用語でフランス語が幅を利か せたけれども、世界が狭くなって科学技術(について)討論したり、協定したりする のに非常に厄介なので、だんだんと(国際語から)外れていった」と反論した。
 石原知事は「私はフランス文学が好きで、フランス語好きで人が読まなかったリラ ダンを読んで訳したこともある。フランス文化に愛着もあるし、尊敬している」と述 べる一方、「首都大学東京の開学に反対した多くは語学の先生。フランス語の先生は 10人近くいたが、受講している学生は1人もいなかった。結果、先進国の首都の大 学で語学に対する学生たちのフランス語の需要が皆無に近いのは残念だが、フランス もそういう事実は認めるべきだ」とした。

産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/050715/sha085.htm
タイトル:「仏語批判、真摯に考えるべき」会見で石原知事

…石原慎太郎(いしはら・しんたろう)東京都知事は15日の記者会見で、数字 を勘定する際の不便さなどを説明した上で「フランス政府に文句言ったらいい」と述べた。
 また「わたしはフランス文化に非常に愛着もあるし、尊敬もしているが、フランス語 の厄介さはだんだん阻害要因になってね。批判が当たっているかどうか真摯(しんし) に考えるべきではないか」と話した。(共同)

このように各社の報道を並べてみると、いつものようにいったい本当はなんと言っ たのかが、気になってくる。幸いなことに、Web 上では、 7月15日の都知事会見 で確認できるし、石原都知事の会見内容 をテキスト化しているサイトでは、すでにこの日の会見の模様を、 ここで公開している。 興味のある方は、是非、参照して頂きたい。

このような会見の文脈からはずれて、手短に知事の「反論」をまとめるのは、 正直言ってかなり困難な作業である。ましてや、論理が飛躍しているから、 その部分を埋めて解説するのはさらに難しさを増す。 今回は、マスコミ各社の要約の問題点を指摘するのではなく、 都知事の「反論」が、反論になっていないことを、言語研究者の一人として、 コメントするにとどめたい。

3. 言葉と数

まず、石原都知事の会見内容 をテキスト化しているサイトから一部引用する。

 例えば電話がこのごろプッシュフォンになったよね。 昔みたいにダイヤルをグルグル回すなら別だけど、 プッシュフォンでポンポンと押していくときに、 「ちょっとそこに電話かけたいんだけど何番?」っていったときに、 例えば局番が91っていうときに、 ○○○○(仏語) って4を押しちゃったらもう駄目なんだよ、 ちゃんと聞かないと。4つの20の11って言ったら、 つまり全部聞かないと91って・・・。 こんな言葉はやっぱり○ ○○○。だから、 かつて外交官の公用語としてフランス語ってのは幅を利かしてたけども、 世界が狭くなっていろんな問題が出てきて、 特に非常に国際関係で重要な要因である科学技術の討論をしたり協定したりするときに非常に厄介なんで、 そういうことから段々外れてったんですよ。

まず、冷静になれば、誰が考えてもおかしい論点を2つ指摘しよう。
(1) 「ある言語における数字の数え方」=「その言語そのもの」という誤った一般化。
(2) 「ある言語における数字の数え方」が厄介だから、「その言語が段々外れて」いった、という理由づけ。

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「都立大って首都大になったんじゃないの?」という声 :[2005/07/16]

  1. はじめに結論
  2. 学術振興会の扱い
  3. 世間一般の認識
  4. されど骨抜き4大学

1. はじめに結論
「都立大って首都大になったんじゃないの?」という疑問を、都立大を出てから というもの、何度も聞かされることになった。

もちろん、「それは違います。都立大学は2011年3月までは、存続するんです。」 と答えることにしている。

2005年7月のある日、都立大のプレート を証拠写真として撮影してきた。 これは、大学正面入り口の左門柱にあるプレートだ。右門柱には、 「首都大学東京」のプレートがあるが、これは撮影しなかった。 つまり、今、南大沢のキャンパスの入り口には、右に「首都大学東京」、 左に「東京都立大学」の看板がかかっている。2つの大学が併存している状況が、 南大沢キャンパスに行くと一目瞭然で分かる。

もちろん、現在(2005年)でも東京都立大学の学生・院生はいる。いや、むしろ、 南大沢では、東京都立大学の学生・院生の方が多数派である。 大学2年生から4年生、および、B類の3年生から5年生、そして、 修士課程2年生以上は、すべて都立大生なのだから、圧倒的多数といってもよい。 しかし、都立大には新入生が入ってこないので、 これから、一年毎に都立大生の数が減っていく、という状況だ。

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2005年都議会議員選挙:「予想された結果」という落とし穴 :[2005/07/8]

  1. はじめに
  2. 「都立大」の請願や陳情に反対し、「首大定款」を支持した都議会議員の当落
  3. 東京都という<ムラ>
  4. 東京都議会選挙で考えたこと

1. はじめに
2005年7月3日、東京都議会議員選挙が行われ、その結果は翌日の新聞を賑わした。 しかし、すでに3〜4日も経つと、 もうすっかり都議会選挙の話は過去のものとなり、 新聞やテレビなどのマスコミのニュースからは姿を消し、 次なる<新しい知らせ>が世間を騒がせている。

東京都議会議員選挙(2005年7月3日)の投票率は、 43.99%で史上2番目に低い結果となり、 前回の選挙を下回る低い水準だった。議席数では、自民党が3減らして48、 民主党16増やして35,公明党が2増やして23、共産党が2減らして13、 生活者ネットワークが3減らして3となった。

この結果だけ見ると、
 (1)  有権者10人中、5〜6人が選挙に行かなかった。
 (2)  民主党が議席数を大幅に増やした(+16)。
 (3)  自民党は、議席を3しか減らさなかった。
という3点が目立つが、上位4政党の得票数と得票率で2001年の都議選と比較すると、 少し違った状況が見える。

    2001年都議選   2005年都議選
 自民 172万票 36.0% 134万票 30.7%
 公明   72万票 15.1%   79万票 18.0%
 民主   65万票 13.5% 108万票 24.5%
 共産   75万票 15.6%   68万票 15.6%

すなわち、
 (4) 得票率を減らしたのは、自民党のみ(マイナス 5.3%)。
そして、今回、連立する公明党との選挙協力によって、公明党議員の出馬しない 選挙区では、公明党支持者が自民党支持として協力した、という情報が流れてい ることを考慮すると、公明党の支持なくして自民党単独で都議会選挙を戦っていたら、 結果はもっと悲惨なものになっていたことが想像できる。

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4月2日に行われた<〜「都民の会」再発足に向けて〜集会&総会>について[2005/04/14]

『世界』5月号(4/8発売)に,初見 基氏による論考が発表[2005/04/08]